前回のAI流通革命3.0研究会では、「データ活用・意思決定」をテーマに議論を行いました。
その中で浮かび上がったのは、データを分析すること自体ではなく、データを実行につなげられているか、という論点です。
企業には、売上、粗利益、客数、在庫、人件費など、日々さまざまなデータが蓄積されています。
システムの進化によって、以前より速く、細かく数字を確認できる企業も増えています。
しかし、数字が見えることと、業績が変わることは同じではありません。
データ活用の前提になるのは、「何をするのか」という実行計画です。
お客様に満足していただくために何をするのか。その行動を具体化し、実行した結果としてどの数字を目指すのかを決める。
そして実績を確認し、目標との差から問題点を見つけ、対応策を考えて次の実行につなげる。
データは、この一連のマネジメントを動かすためのツールと捉えることができます。
この視点は、営業利益を考える際にも重要です。営業利益だけを見て「もっと利益を上げよう」と号令をかけても、現場の行動は具体化しません。
売上をどう拡大するのか。粗利益をどう増やすのか。どの経費をどのようにコントロールするのか。それぞれの打ち手と目標を組み立て、その結果として営業利益が決まります。
つまり、営業利益はさまざまな実行の積み重ねによって生まれる「結果」として見る必要があります。
例えば粗利益を増やす場合にも、単に粗利率を見るだけではありません。
仕入原価、商品構成、特売商品の構成、売り込み商品の構成などを確認し、何を変えるのかを決める必要があります。
価格を下げずに売り込むなら、売場の位置、フェース数、在庫、POP、接客といった具体的な行動まで落とし込んで初めて、数字が現場の実行と結びつきます。
人件費も同様です。月次の人件費が確定してから数字を見ても、その月の行動を修正することはできません。
期中で状況を把握し、売上の見込みと人時数などを照らし合わせながら、早く対応することが重要になります。
意見交換会では、「営業利益率4%を実現する会社は何が違うのか?」への関心が高く、「ドラッグストアとの競争ではなく、『使い分けられる店』になるには?」にも多くの票が集まりました。
利益と競争力をどう両立するかは、多くの経営者にとって共通する問題意識だと考えられます。
だからこそ、経営者がデータ活用を考えるときに問うべきなのは、「どれだけ多くのデータを持っているか」だけではありません。
自社では、実行計画と目標が結びついているか。目標と実績の差を素早く捉え、修正行動までつなげられているか。
そして売上、粗利益、経費という個別の数字が、現場の具体的な行動と結びついているか。
データを見る会社から、データで動く会社へ変われるかどうか。
データ活用の価値は、分析の高度さだけでなく、その先の実行によって決まるのではないでしょうか。
このテーマは先日のAI流通革命3.0研究会でも議論しました。
開催報告では、「データ活用・意思決定」をテーマにした講演内容や参加企業との意見交換の概要をご紹介しています。
※本記事は大久保恒夫氏の講演内容をもとに研究会事務局が作成したものです(文責:研究会事務局)
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