【開催報告】2026年欧州流通視察ツアーの開催

AI流通革命3.0研究会では、2026年10月5日(月)~9日(金)、英国ロンドンおよびフランス・パリを訪問する「2026年欧州流通視察ツアー」を開催しました。
本ツアーは、欧州の先進小売企業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の実態を現地で学び、日本の小売業の経営改革に生かすことを目的として実施したものです。
英国最大手の小売企業Tesco(テスコ)を中心に、ネットスーパーの自動化施設、顧客データ分析を担うdunnhumby(ダンハンビー)、電子棚札を活用する店舗などを訪問しました。また、フランスでは複数のスーパーマーケットを視察し、商品政策や売場づくり、店舗運営の特徴を確認しました。

■Tescoの店舗・ネットスーパー施設を視察
英国では、Tesco Extra Watford店、Tesco Extra Bar Hill店、Tesco Enfield CFCを訪問しました。
Watford店では、大型店舗の売場構成や商品政策に加え、短時間配送サービス「Whoosh」など、実店舗とオンラインを組み合わせた販売の仕組みについて学びました。
Bar Hill店では、店舗に併設されたMFC(Micro Fulfilment Centre)を視察しました。MFCは、ネットスーパーの注文商品を効率的にピッキングするための小型自動化施設です。
特に印象的だったのは、すべての商品を自動化するのではなく、自動化に適した商品と人手で対応する商品を分け、設備投資と作業効率のバランスを取っている点です。
さらに、ネットスーパー専用の大型物流施設であるEnfield CFC(Customer Fulfilment Centre)も訪問しました。商品の入荷・保管・ピッキングから配送までの一連の工程を見学し、商品配置の工夫や配送データの活用など、ネットスーパーの生産性を高める取り組みについて説明を受けました。
店舗併設型MFCと専用物流施設CFCの両方を視察できたことは、今回のツアーの大きな特徴となりました。

■dunnhumbyに学ぶ顧客データ活用と価格戦略
Tescoの顧客データ分析やマーケティングを支えるdunnhumby社も訪問しました。
dunnhumbyでは、Tescoの会員プログラム「Clubcard」などを通じて得られる顧客購買データを活用し、顧客理解を起点とした品揃え、価格設定、販促、リテールメディアなどの取り組みについて説明を受けました。
特に注目されたのは、Tescoの価格戦略です。
競合ディスカウントストアへの価格対抗、EDLP(Everyday Low Price)、会員向け価格施策などを組み合わせ、価格競争力と収益性の両立を図っています。
単に商品を値下げするのではなく、顧客が価格を重視する商品を見極め、商品ごとの役割に応じた価格政策を実施する考え方は、日本の小売業にとっても参考になる内容でした。
また、データ分析を分析そのもので終わらせず、実際の売場や販促施策に反映し、その成果を検証することの重要性を改めて認識する機会となりました。

■電子棚札を活用した店舗運営を視察
ロンドンでは、Kavanagh’sの店舗も訪問し、Vusion社の電子棚札を活用した売場運営を視察し、説明を受けました。
電子棚札は、売価変更作業の効率化に加え、店舗運営のデジタル化を進める基盤の一つとして注目されています。
今回の視察では、技術そのものの先進性だけでなく、店舗作業の削減や運営効率の改善にどのようにつながるかという観点から、参加者間でも意見交換が行われました。

■フランスの小売店舗・売場づくりを視察
パリでは、Carrefour、E.Leclerc、Intermarchéなどの小売店舗を視察しました。
各店舗では、青果や精肉などの生鮮売場、惣菜、加工食品、PB商品、売場レイアウトなどを確認しました。
特に、生鮮食品の鮮度感を伝える陳列方法や、商品パッケージ、売場全体の演出など、日本のスーパーマーケットとの違いを考える機会となりました。
また、フランスのマルシェ(市場)も視察し、地域に根付いた食文化や、鮮度感を重視した商品販売のあり方について理解を深めました。
デジタル技術だけでなく、商品そのものの魅力や売場づくりも、小売業の競争力を支える重要な要素であることを再認識しました。

■大久保会長による経営改革の解説
移動中のバス車内では、大久保恒夫会長が、今回の視察内容と自身の経営改革経験を結びつけながら、日本の小売業が収益性を高めるための考え方を解説しました。
主なテーマは、ネットスーパーの収益化、価格戦略と粗利率改善、店舗作業の効率化と人時生産性の向上です。
特に、売上高の拡大だけを追求するのではなく、仕入原価の改善、高粗利商品の販売構成比向上、無駄な特売や店舗作業の削減などを組み合わせ、営業利益率を高めることの重要性が強調されました。
また、メーカーの生産効率改善によって生まれた利益を、顧客・小売企業・メーカーで分け合うという考え方も紹介されました。
先進的なデジタル技術を導入すること自体が目的ではなく、最終的に粗利率や人時生産性、営業利益率の改善につなげることが重要であるという視点は、今回の視察全体を通じた大きな学びとなりました。

■今回の視察を通じて
今回の欧州視察では、TescoのMFC・CFCの内部を見学し、ネットスーパーの効率化を支える仕組みを直接確認できたことに加え、dunnhumbyの顧客データ活用や価格戦略、英国・フランスの店舗運営など、幅広いテーマについて学ぶことができました。
また、参加者同士が現地で意見を交わし、それぞれの企業の課題や日本での応用可能性について議論できたことも、大きな成果の一つです。
AI流通革命3.0研究会では、今後も国内外の先進事例を学びながら、AI・データ活用による小売業の生産性向上と収益性改善に向けた情報共有・研究活動を進めてまいります。
ご参加いただいた皆様、視察先の関係者の皆様、そして今回のツアーの実現にご尽力いただいた皆様に、心より御礼申し上げます。

関連イベントのご案内
2026年11月18日(水)には、AI流通革命3.0研究会ウェビナー「AI時代の小売経営と欧州DX」を開催いたします。
本ウェビナーでは、今回の欧州視察ツアーで現地視察のご案内をいただいた片山隆氏より、約25分間にわたり視察報告を行っていただきます。
今回のツアーに参加されなかった方にも、欧州小売業の先進的な取り組みを知っていただける機会となりますので、ぜひご参加ください。
開催日: 2026年11月18日(水)
テーマ: AI時代の小売経営と欧州DX
欧州視察報告: 片山隆氏(約25分間)

※お申込み・詳細はこちら

AI時代の小売経営と欧州DX