4/17ネットスーパー実行研究会ウェビナー開催報告

みなさま、こんにちは。先日開催しましたネットスーパー実行研究会ウェビナーについてご報告させていただきます。

最初に「今日の研究会のポイント」について株式会社リテイルサイエンスファウンダー大久保恒夫よりお話をさせていただきました。

続いて、「小売事業者様にとっての楽天全国スーパーのご提供価値」と題し、楽天グループ株式会社 スーパーマーケットOMO/DX事業 大井 英之様にお話いただきました。実店舗利用者への独自調査(2023年楽天インサイト実施のWeb調査より抜粋、ネットスーパー未導入のSM事業者(1,000億規模)の実店舗利用者への調査、n数≒1,500)によると、利用頻度が週2~3回以上の高頻度で、まだネットスーパーをまだ利用していないお客様が、ネットスーパーを利用したいという意向が高いこと、また、1回あたりの買い物金額別でも、高単価帯のお客様が、ネットスーパーの利用意向が高いことが分かりました。考察として、①利用頻度が多い=利用できない場面も現出する、②高単価=持ち帰り品が多い、と想定ができ、これらのお客様のコンビニエンスニーズにお応え出来るのがネットスーパーなのだと、改めて認識しました。さらに興味深かった事は、実店舗利用とネットスーパー利用を併用された場合の総利用額は、ロイヤルカスタマーでは、ネットスーパー利用前の、実店舗利用のみだった時の利用額に留まるのではなく、ネットスーパー利用分が積みあがる傾向にあるという事でした。これらのことから、ネットスーパー事業は、従来の実店舗経営の延長ではなく、全く別軸であり、コンビニエンスニーズに応えること、また、ロイヤルカスタマーの存在によりフォーカスすることが、事業組み立てにおいて非常に重要であると再認識しました。

休憩を挟んで、「最新ネットスーパートレンド」と題し、株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア編集長の阿部幸治様にお話しいただきました。矢野経済研究所による、22年度の食品通販市場は前年度比0.3%減でしたが、ネットスーパーは増加し、市場規模は2470億円に上りました。ネットスーパーがこの数字のまま成長維持できるか、ですが、阿部様は、インフレによる単価上昇が見込まれ、利用件数が減っても市場規模はあがりそうではある、としながらも、以前から指摘の通り、ネットスーパーは、利用頻度が落ちると忘れられる危険がある、という点が懸念材料だと述べられていました。次項では、ダイヤモンド・リテイルメディアの取材・調査より、フレスタ、ベイシア、サミットのネットスーパー事業の拡大状況を、店舗数や地域図を示していただきました。さらに、ライフ×アマゾンが店出荷型+アマゾンフレッシュの二刀流に加え、置き配を開始したニュース、また、イトーヨーカドーが、オニゴーとネットスーパー+クイックコマースによる短時間宅配の二刀流を進めるなどのニュースを解説いただきました。このような業界のトレンドが、今後どのようにお客様に受け入れられ、市場に馴染んでいくのか、モニターを続けたい所です。

続いて、「中国ニューリテールの失敗と再編」と題し、GenBridge Capital Value Creation Associate Director 片矢 東滋郎様よりお話しいただきました。片矢様は今回より初めてご登壇頂く、中国の小売・流通業界の投資ファンドでリサーチや投資先サポートを担当されている方です。投資ファンドという立場から、業界の変遷を、鳥瞰でお聞きする事ができました。2016年、中国のアリババ創業者ジャック・マー氏が提唱した、デジタル技術を応用した小売業態「ニューリテール」を軸に、お話は進みます。前提として、中国では、2015~2019年にTMT投資(先行投資でユーザーの獲得を目指し、陣取りゲームに発展し、その後スケールメリットや価格調整により利益を上げるロジック)ブームが過熱・縮小し、その資金が小売市場に流れたという背景がありました。大量に投入された資金により、体力のある大手企業が様々な実証実験を実施、ニューリテールのビジネスモデルとして、大きく3つ、オンラインスーパーと共同購入、O2O食品スーパーが展開され、結果的には、大手3社は全敗だったと、その失敗の要因と考察を、具体的にお話いただきました。しかしながら、そのような状況の中、成功を収めた企業もあり、その内実も、非常に示唆に富んだ内容でした。中国小売業界における壮大な実証実験により露出した、小売企業の栄枯盛衰は、今後の日本市場においても、学びが大きいと感じました。

そして、「米国食品小売業界の最前線レポート」と題し、リテールストラテジスト平山幸江様よりお話しいただきました。初めに、最新の米国の物価指数と消費マインド、小売販売額の推移を確認し、次に、店舗・ネットスーパーのニュースをご紹介いただきました。アマゾンフレッシュのJWOシステム撤去、ホールフーズマーケットの小型フォーマット開発、アマゾンの実店舗戦略の行方、ターゲットの10点以下限定のセルフレジ「エクスプレスチェックアウト」試験、ダラージェネラルのセルフレジ完全撤廃計画、サムズクラブの万引き防止ゲートテスト開始、アルディの出店計画の加速など、ニュースが盛りだくさんでした。米国での実証実験のスピードの速さに、驚かされるばかりです。加えて、サプライチェーン、マーチャンダイジング、マーケティングの項目で、最先端のニュースを、実証実験の結果や具体的な数字とともに考察いただきました。デジタルを応用した実証実験では、日本の遅れを痛く実感しますが、後進として、米国企業の実証実験結果を、いかに受け取り、今後の戦略に反映させるか、この研究会で、引き続きみなさまと議論と共有をできればと思います。

その後、大久保より総括をさせていただきました。クイックコマース事業のコンセプトは、コンビニエンスニーズであり、従来の実店舗経営で取り組んできたディスカウント戦略ではない、という事を、繰り返し強くお伝えしました。マーケットは限定的であるものの、とにもかくにもコンビニエンスニーズであるため、コンビニエンスストアよりも価格を高くできることができます。つまり、商品単価を上げて、粗利率を高くすることが可能です。コンビニエンスという付加価値があるため、リアルの店舗の売価に合わせる必要はない事を、頭にたたきこまなければならないと感じました。資料と研究会の中では、具体的な経営方針について、約20項目の視点で解説をしました。

最後に、資料ダウンロード用アンケートについてのご案内をし、閉会とさせていただきました。
次回もまた皆様にお会いできますことを楽しみにしております。
ご参加いただき、ありがとうございました。